सत्यमेव जयते
いのち み
生命のきらめきを視る
島根大学 医・生物ラマンプロジェクトセンター
医・生物ラマンプロジェクトセンターとは
医・生物ラマンプロジェクトセンター長
山 本 達 之
医・生物ラマンプロジェクトセンターは,平成26年2月に発足して以来,ラマン分光法の医学と生物学への基礎的応用的研究を推し進めています。このプロジェクトセンターの母体となったのは,平成21年10月に発足して,現在も活動を続けている,島根大学医・生物ラマン研究会です。この研究会は,毎年1回程度,ラマン分光法に関連した研究についての講演会を継続的に開催してきています。
ラマン分光法は,インドの科学者,C.V.ラマンが,1928年に発見した光散乱現象で,2年後の1930年には,ノーベル物理学賞を単独で受賞しました。発見からわずか2年後にノーベル賞を受賞したことは,当時の科学界に与えた衝撃の大きさを物語っています。ラマン散乱とは,入射した光(電磁波)が,分子とエネルギーのやりとりを行なう現象で,この現象を利用して,分子の振動や回転に関する情報を得ることができます。ラマン散乱光の強度を,エネルギー変化に対してプロットして得られるスペクトルは,“分子の指紋”とも呼べるもので,このスペクトルを解析することによって,分子構造や分子周辺の環境に関する情報を得ることができます。ラマンスペクトルを測定して解析する手法のことを,ラマン分光法といいます。
ラマン分光法の優れた点は,1)測定試料の前処理が不要,2)試料に与える損傷の少ない低侵襲性の測定法であること,3)試料の状態に関わらず(気体,液体,固体を問わない)測定可能である,などの点です。最近では,種々の非線形ラマン分光法なども開発され,様々な分野で応用研究が進んでいます。
しかしその一方で、生きた試料や細胞を対象にしたラマン分光法の応用研究 は比較的最近までほとんど進んでいませんでした。これは,生細胞や生組織に損傷を与えることなく,良好なラマンスペクトルを得ることが難しかったためです。しかし,高感度なCCD検知器,安価で安定な半導体レーザ,高性能のパソコンの急速な普及などの技術革新によって,この15年くらいで,生細胞や生組織への応用研究が急速に進みました。私たち,医・生物ラマンプロジェクトセンターの主な取り組みは,以下の通りです。
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ラマン分光法を活用した非生検的な新規医療診断法の開発
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ラマン分光法を活用した基礎的応用的な生物学研究の推進
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アジアを中心とした海外の先進的な大学等との連携した国際共同研究の推進
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医理工農学の研究分野をまたがった幅広い分野の研究を進めることで,若手研究者・技術者育成の教育効果を高めること
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ラマン分光法に関する公開講座などを定期的に実施して,同分光法の社会的認知を高め,地の拠点としての島根大学の活動を広める
医・生物ラマンプロジェクトセンターの活動へのご理解とご協力を,どうぞよろしくお願い申し上げます。